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木村隆良先生の出張実験教室の報告(前編)

『極低温の世界』と聞けばどういったものを思い浮かべるでしょうか?南極や北極でしょうか?それともシベリアでしょうか?現在の世界記録(人間の高さでの実測データ)は環境省のウェブページによりますと南極のボストーク基地で観測された-89.2℃らしいです。(参考ページ:環境省_南極キッズ − 北極と南極はどちらが寒いの? (https://www.env.go.jp/nature/nankyoku/kankyohogo/nankyoku_kids/hakase/kagaku/index.htmlより))これでも十分に寒いです。しかし、極低温の世界はこれ以上に低い温度です。今回実験に用いた液体窒素は、-196℃という通常では扱うことのない温度です。今回はこの液体窒素を主役にした実験を行っていただきました。
まず初めは液体窒素大噴火(木村先生のオリジナルの実験)です。熱湯の中に一定量の液体窒素を投入します。そうすると湯に触れた一部の液体窒素は気体に状態変化し、残りの液体窒素を周囲にばらまきます。そして、その液体窒素は周囲の空気を急激に冷却し雲を発生させます。空気中には目に見えない気体の水(水蒸気)が存在することを証明してくれる実験です。蒸発と凝縮がほぼ同時に見られる非常にユニーク実験ですね。当然ですが液体窒素の量を誤ると危険ですので、この実験を誰にも怪我を負わせず成し遂げる木村先生の技量には脱帽です。
次に定番のバラを液体窒素で凍らせる実験を行いました。バラを用いる理由としては、バラは他の花に比べて水分の含有量が多く、その実験効果が確認しやすいからだそうです。そう聞くと水分量の少ない花で行うとどうなるかが気になるのが科学好きの定めですね。もう一つ、大根をスライスしたものに関しても実験を行っていただきました。「大根の水分量はどのくらいでしょうか?」木村先生の発問に対して、様々な答えが出ていました。この辺の感覚に関しては、ベースとなる知識の有無が大きくなります。例えば一定以上の年齢の子供であれば、「人間の約70%は水」という言葉を聞いたことがあるので、「人間よりは多いだろう。」と推理します。ある種の物差しが出来上がっている証拠ですね。逆に言えば物差しがしっかりしている分そこから乖離した答えが出にくくなるとも言える気がします。本線に戻りますが、「答えは95%程度。」と聞き、皆「えー!」と驚いていました。栄養のためにと思って大根を摂取していたのにそれが実は95%水と言われると少し寂しくなりますね。凍らせた大根を握りつぶした感想を生徒に聞くと「ポテトチップスを潰したような感じだった。」ということでした。確かに薄くして固めるという作業は共通部分なのかもしれませんね。
3つ目にさらにこちらも定番の実験、凍らせたバナナで釘を打つという体験をさせて頂きました。ここで参加した子供から質問がありました。「凍ったバナナは、元に戻ったら食べられるの?」良い質問ですね。私もこの問いについては興味がありました。結論を言えば、「食べられる。」そうです。一度、細胞レベルで破壊されてしまうため、甘みを凝縮したクリームのような味がするそうです。実験終了まで放置して、実際に見た感想としては「味に興味はありますが、見た目が・・・。」という感じです。数日間放置して腐りかけているのでは?というようなドロドロとした見た目に変わっていました。食すのにはなかなかの度胸が要りそうです。
(写真は木村先生と生徒の許諾の下で撮影と掲載を行っております。)